揺らぐ幻影


ここは教室、青春真っ盛り。

同い年が集合しているというのに、精神面で誤差が生じるのはなぜだろう。

容姿をイジってからかう小学生低学年がいたり、穏やかにやり過ごすご老人がいたり、ハート年齢は様々だ。


そしてまた、大人なのか子供なのか微妙なラインで立ち振る舞う女子生徒もいる。


「この前までF組行くとかなかったし、辞書借りるとかなかったじゃん。

赤ちゃんばりに進歩してんじゃん! はしたない欲張り女っ」


「ほんまそれ、欲しがり女っ、マイナス発言ウザイからネガティブ入る毎にプリクラ代出してよ?」

わざと揶揄した言い回しをする二人は笑っていて、そんなゆるいお喋りを裏返せば核がある。


これこそがむやみやたらに名言を吐かない結衣の大好きな友人の在り方だ。

ガッツリ助言なんて、そんなアツイ友情は苦手、――けれども三人娘はドライに見せて軸は揺らがない。


そう、感動的なフォローはくれないが、絶対につまらない冗談で笑ってくれる女友達だ。

喉の中にはちみつを直接垂らしたように、甘ったるくて気持ち悪いのに、

穏やかな気持ちが肺に届いて呼吸が楽になる不思議。


ぼやけた世界が広がり見えてくる、澄んだ瞳で見渡せば分かる。

泣いたら無意味。それは構ってちゃん。
笑顔で簡単。それはナルシスト。

今、結衣は喜べばいいのだ。
頑張った自分を喜んで褒めればいいだけだ。

頭が良くないのだから、脳天気に良かったことを素直に喜べばいいだけではないか。

わざわざ自分でマイナス評価を下して凹むなんて、ウザイと定評のあるただの自己顕示欲ガールではないか。


  辞書借りて、話して、ガムあげた

  借りずに話さずにガムあげないより、全然良かったし

ポジティブでナンボ、それが新ルールだ。

はちみつは民間治療によく用いられるらしいので、まやかしにしろ結衣は元気になったように、

単純な方が恋愛は頑張れるのかもしれない。


まだまだ手のかかるお子様で、右手に愛美、左手に里緒菜、幼子が両親にぶら下がるようにして歩けばいい。

甘えられるうちは、どっぷり甘えてしまえばいい。

手のかかる子ほど――……である。
だとしたら、過保護に育てられてみよう。