「ない! 会話なんかゼロ。キャッチされただけ。いや、むしろボールなんか届いてさえないかも……はー、……なんか、んー、も、やだっ」
せっかく勇気を出したのに、報われないことが悲しい。
今にも泣き出しそうな結衣に、里緒菜は慌てて「もぉーマイナスやめて、凍死する気か」と、肩を小突いた。
「ほんまそれ、誰も初めから期待してないから、だって結衣とか存在がショボイし」
呆れたように眉をわざと持ち上げて、愛美は変な顔をして笑う。
こちらが悲観しているのに、どうして二人は朗らかに会話を進めるのだろうか。
……。
全然シリアスになってくれない友人を見ていると、結衣もだんだん自分の思考を客観視できてきた。
彼女たちが言うように、確かに期待し過ぎたのかもしれない。
イメージでは電子辞書をきっかけに話が盛り上がり、英語の授業について話をして、そこからプロフィールを披露して――
シュミレーションでは近藤とフランクに談笑できていたのだけれど、
どうやら彼女は自分の実力が分かっていなかったようだ。
あーあ、
甘く期待し過ぎか……
てゆか妄想癖?
空想がそのまま現実になればいいのに。
頭の中の物語を英文にしなさいと言われたら、嫌いな英語でも喜んで翻訳するのにと結衣は思った。
頼りない曖昧な笑みを作る少女のホッペをひっぱり、愛美は目を細め言い放った。
「はい独裁者。すぐに結果を求めるな、これ新ルール』
新たな片思い法律の追加に、結衣はきょとんと目の前の瞳を覗いた。
「……結果?」
少し視線を逸らせば、肩の向こうには二十数名のクラスメートが居て、
それぞれ小グループにかたまっている。
寒空に押され気味で最近元気のない太陽の明かりが窓の中から見える。
意味なく制服を着ているけれど、集団で同じ格好は少々不気味な光景ではないだろうか。
それでも高校生、制服が大好きだし、好きな人はブレザー姿がまた似合う。
ほら、ここに居もしない人を想えば、自然と唇がゆるむのは何故。



