甘く・深く・愛して・溺れて

用意周到な兄貴のことだからさ、



きっと、あらかじめ、店長に話をつけてあるんだろうけどな。



『俺は適当に時間つぶすから、兄貴はこいつと話せよ…こいつもそのつもりみたいだし…』



そう言い終わると、その場を離れることにした俺は、



二人を背にして、振り返ることもなく、歩き出した。



戸惑いながらも、兄貴を見つめる綾瀬月美の表情と、



綾瀬月美を愛しそうに、見つめる兄貴の顔が、



振り返らなくても、目に浮かぶようで、



それを掻き消すように、ただ無心で歩いた俺。



気がつけば、さっき降りたバス停の近くまで来ていた。