甘く・深く・愛して・溺れて

親が決めた人生を歩かなければいけない立場の空人。



空人の彼女もそう。



2人はある意味似ている境遇にいて、その分分かり合えるんだね。



『親父にさ、彼女と結婚はしない。でも付き合いは続けるって言ったら、好きにしろ…結婚は仕事で一人前になってからのタイミングでいいって言われてさ…』



それから今日までこうして過ごしてきた空人。



『彼女と別れるのは親父の会社を潰すことに直接繋がる……。でも月美が望むなら、俺は彼女と別れてもいい…。近頃そう思うようになってきてるんだ…』



空人はいつになく真剣な表情で言葉を続けた。



『彼女を守ってやりたいと思ってたのは事実だ…でもそれで月美を失うのなら、そのほうが俺はもっと怖いんだ…だから…月美の気持ちを聞きたくてね…今日は仕事の打ち合わせをキャンセルして、月美の学校へ迎えに行ったんだ…』