しばらく走ると、暗いトンネルに入った。わずかに光が灯っているが、薄暗い。後ろから「お父さん、怖いよ~」と聞こえた。トンネルから出ると目映い太陽の光がいっそう眩しく感じた。目を細くして山頂を眺めると赤い屋敷が目に入った。
しばらく走ると、今度は長い直線の道路に入り、ハンドルを両腕で固定し、運転手は鏡ごしに乗客の観察を始めた。
右の座席で後ろから二番目と三番目に座っている男女は、おそらく夫婦だろう。仲が良さそうでさっきまで楽しく話していた。男女ともに高齢で互いに優しそうな顔をしている。男の方は少し太った感じで、頭の頂上は完全に肌色が顔を見せていた。さっきまでずっと窓の外を眺めていた。女の方は黄色のポロシャツが印象的だった。髪はもうほとんど白い。しかし二人とも、楽しそうだった。
その向かいの席に座っている男女は、老夫婦とは対象的な印象を受けた。男は服装はラフなのだが、バスに乗ってからずっとパソコンをいじっている。女は紫の派手な服をまとい、腕や指、首などにはいかにも高そうなアクセサリーを身につけていた。顔も化粧が濃く、さっきまでずっと鏡を片手に、化粧品とずっと格闘していた。
