先ほどまで、どんなことにも冷静だった黒川が、楽しい事を目前にはしゃぐ子供のようになっていた。


「あれって、あたしたちの名前……」


尚美がスクリーンを見て呟く。黒川の首が人の限界まで曲がり、視界に尚美をとらえた。


「そうです。あなたたちがゲームの参加者なのです」


黒川は不気味な笑みを見せると首を元に戻した。


「何が始まるのかなぁ」


百合が楽しそうな表情でスクリーンを見つめる。


「気が利くわね~。なんだかワクワクしちゃうわ」


洋子は笑顔で黒川の方を見た。黒川もそれに気付いたのか、洋子の方を見た。


しかし、黒川の表情に何か違和感があった。何かがおかしい。


その違和感は直ぐに気付いた。黒川の目の焦点があっていないのだ。洋子は思わず顔をそらした。


「面倒くさいな。私はこれから部屋に戻って仕事をしなければいけない。だからゲームは遠慮させてもらうよ」


隆一が腕時計を見ながら言った。すかさず拓真が笑いながら「おっさ~ん、空気読めよ~」と呟いたが、隆一は拓真を無視して立ち上がる。


「じゃあ、これで私は失礼」