『嘘、つくな』

その声を

私が聞き間違う訳

・・・無い。

ずっと、聞きたかった声

大好きな声・・・

「鍵、しろ」

「わかったよ・・・」

彼は、自転車に鍵を掛ける為に
もう一度、表へ出てくる。

「・・・あの、何か?」

彼の声・・・

今の私には届かない

表札には、『高月』の文字。

あの声は確かに、浬。

ここは、浬の実家。

どうしてここに・・・里帰り?

表札を見て、涙ぐむ私に
彼は驚いている。

「靴・・・怪我?」

私はハイヒールを手に持ち
頭を左右に振る。

私の事をまじまじと見つめる
彼は、思い出したように問う

「あのさ・・・
 この間、会いましたよね?
 駅で?」

私は、頷く・・・