『引き合わせるのは
 ・・・
 わたし達の想い』

ここまで来て
彼を、見失いたくない

少しでも
彼に、追いつきたい

何が、そうさせるのか

分からない・・・

追いかけて
どうするつもりなのか

分からない・・・

それなのに、私はヒールを
手に持ち、最後の力を
振り絞って走った。

幸い、私と彼以外
この道を通る人はいない。

変質者だと思われる事は
無かった。

疲れて痛む足に、乱れる呼吸

私は、細い路地を抜けて
やっと辿り着いた。

少し離れた電信柱に隠れて
彼を見つめる。

自転車を玄関前に放置した
彼は、ポストを除き
何かを取り出し敷地内へ
入って行く。

すると、二階の窓から
男性の声が聞こえた。

「リン、鍵かけろよ」

「かけたよ」

鍵をかけたなんて
嘘ばっかり。

「嘘、つくな」