偶然、あの場所で藍の声を
聞いた俺は、懐かしさとは
違う、胸の痛みを知る・・・

ズキッ・・・

顔を覆う手を下ろすことが
できなかったのは、組長として
走り出した俺が藍に会うわけ
にはいかない

何て、言うのは建前で

本当は、そんな
かっこいいもんじゃねえ

捨てられた男は、臆病なだけ

藍に気づかれる前に
ここを離れた方がいい。

そして、俺は
藍の前から逃げた。

その翌朝、早くから目覚めた
俺は、気が付けばあの部屋の
前に立ち、鍵を開けていた。

この部屋に来るのは久しぶりで
掃除こそ、舎弟に頼んでいるが
藍に逢うまで、俺はこの部屋の
存在を忘れていた。