この、面のおかげで
女に不自由した事は無い。

そんな俺は、親父に瓜二つ。

よく似ていると、皆から
言われる。

幼い頃、この世に誕生して
一度も、父の顔を見た事が
無い俺に、母は学生時代の
親父の写真、大切な写真を
よく見せてくれた。

今、年を重ね、鏡に映る
自分自身の姿は紛れもなく
その写真の親父、そのもの

そこに、俺が存在する
ようで、怖いほどだ。

俺が、高校生になった時
母は俺の頬に両手を翳した。

そして、見上げて
少女の恋する瞳で
俺を見つめた。

「私が好きになった頃の
 イオリに、また逢えるなんて
 思わなかった」

その姿を見て、父は右側の口角
だけを上げて笑う。