何とも言えない気持ち。

「アイ、どう
 用意はできてる?
 
 もう、出れる?
 
 ヨシノが車で待ってる
 ・・・
 アイ、聞いてる?」

そこには、芳野の姿は無く。

母だけが、立っていた。

「聞いてるよ・・・ 
 用意ならできてる」

開け放たれたドアの向こう

家の前にエンジンを
掛けたまま停車する
芳野を乗せた車。

玄関に置かれた私の鞄を
手に持つ、母。

「荷物は、これだけ?」

「うん、あっ、ママ
 ちょっと待って」