血が流れ落ちる口元を必死に拭う。 遥は目を閉じて、静かに息をしている。 まだ……。 まだ間に合う。 そう思い直した浩一の耳を叫び声がつんざく。 横を向くと、近くで立ち上がる事が出来ずに座り込んでいた遥の母親が目に入った。 彼女の母親は、目を見開いてこちらを見ている。 いや、浩一の後ろを見つめている。 振り向くと、腹部を刺された男は、どこに持っていたのか、刃物を振り上げてこちらを見下ろしていた。