いつものように仕事をこなし、帰りがけに後輩に誘われたので一杯飲んで帰ることにした。
その時になってようやく、朝発見したメールのことを思い出した。
「新手の悪戯メールっすかねぇ。でも、アドレスが表示されないなんて変だな。携帯、壊れてるんじゃないっすか?」
後輩とは言っても2つしか離れていない藤井は、今年の春入って来たばかりで早くも同期どころか古株までも脅かすくらいのやり手だった。
僕たちの会社は、日本はおろか世界にも二つとして無い文字通り唯一無二の特殊な会社だ。なので、そこで働く者には当然特殊な能力が必要とされる。
僕は運よくその能力に長けていたようだし、隣にいる藤井も同じようにこの仕事を天職としていた。
「谷口さん、明日休みでしょう? 携帯ショップに持ってってみたらどうっすか?」
グラスに入ったビールを最後まで飲み干して、「そうだな。そうしてみるよ」と僕は答えた。