たどり着いた先は、さっきまで僕がいた場所。いや、捕われていた場所。そこにはもちろん、時を止められたままの貴田先生や真鈴たちがいた。そういえば、この猫は何故止まらなかったんだろう?
「あなたが制御したからよ」
僕の心を見透かしたかのように、猫は言った。
「最初の小屋では、あなたには何のコントロールも出来なかった。だけど今は、あなたの気持ちと持つ能力が調和したの。だって、あなたが望んで能力を引き出したのだから」
判るような、判らないような。
「それで、ここに来てどうするの?」
猫は時を止められた連中を見上げて言った。
「この人達を、助けます」
助ける? どうやって? まして、彼女たちは僕の能力を奪おうとしたんだ。何故助ける必要があるんだ?
「圭一くん。いい? あなたの能力だけでは記憶は『交換』しかできません。だけど、彼女たちの記憶は交換したって駄目。抹消しなければ。その為には私の力が必要なの」
一瞬、その話し方で、奏と話している時と重なった。本当に奏なのかもしれない。でも、なんで猫に?
とりあえず今は「なんで彼女たちの記憶を抹消するの? もう僕が襲われないため?」と尋ねた。
「それもある」
猫は言った。
「でも、彼女たちだって被害者なの」
被害者? なんで?
「余計なものが増えすぎて、自分だけでは上手く処理できなくなった。人間が持つ当たり前のジレンマに、彼女たちは麻痺してしまった。そして進むべき方向を間違えたの」