心~保健室の先生と私~【野いちご文庫版】

先生の声に、顔を上げた。


「保健室で待ってるから」


「…………」


「いつでもおいで」


先生は、私の髪をくちゃくちゃってしてから、帰って行った。その温かい手に、何だか泣きそうになる。


ごめん、先生。私、弱い人間だった。


誰かに聞いてもらわなくても大丈夫だと思っていたのに、ダメだったみたい。


つらいの。心が助けてって言っている。


もう、どうすればいいか、わからないの。


心が、痛い。


心も体も、全部が悲鳴を上げている。


「愛花、帰るわよ」


お母さんの声に、足を動かす。


大人だと思っていた。でも、私は大人じゃなかった。


『離婚』……そのひとことで、こんなにも心がゆれている。