心~保健室の先生と私~【野いちご文庫版】

聞きたくない。


お母さんのそんな声。


泣くなんてずるいよ。大人に泣かれたら、子供はどうすればいいの?


泣きたいのはこっちだよ。


やっぱりお母さんは、何もわかってない。 


「もう家を出たりしないから。心配しないで」


でも私は、それだけを言ってまた目を閉じた。


話したくない。


今は何も考えたくない。


それから、看護師さんに点滴を外してもらうまで、お互い無言だった。


病室を出て行くとき、佐野先生に会った。


「すみません。お世話になりました」


お母さんはそう挨拶をしていた。


私はうしろでうつむいていた。


「石川」