「まさか、愛花がこんなにショックを受けてるとは思いませんでした」


「仲がよかったんですか?」


「はい。毎年家族で旅行に行ってました」


「だから、余計につらかったんですね。家族が、壊れてくみたいで」


「ダメな母親です。子供の気持ちにも気付いてあげられなかった」


そう言った石川の母親の目は、かすかにうるんでいた。


「多分、そろそろ点滴が終わるはずです。迎えに行ってあげてください。病室にいます」


「本当にありがとうございました。先生のことは、誰にも言いません」


「それは、こちらこそお礼を言わなくては」


「じゃあ、失礼します」


そう言って石川の母親は病室に向かった。


「はぁ~」


子供が親のケンカを見たらどう思うだろう。


きっと1歳の子供だって、例えば石川のように17歳になっていたって、つらいに違いない。


子どもの心の拠り所は、まず、親だ。


その親が毎日ケンカをしていたら、心が休まる時間がない。


きっと石川は、そんな親を見るのに耐え切れなくなって、妹を連れて家を抜け出していたんだろう。


俺はそっと、石川たちの様子を見に行った。