心~保健室の先生と私~【野いちご文庫版】

「…………」


「急いでそばに行きました。そしたら、泣いてました」


「泣いてた……」


「それで、私に言ったんです。助けてって」


「助けて……」


石川の母親は、手で顔を覆った。


「そのまま意識を失うように、私のところに倒れてきたんで、そのまま店で休ませることにしたんです」


「そうだったんですか」


「すみません、連絡が遅くなって。ご心配なさいましたよね」


「いえ。愛花と会ったのが、先生でよかったです。知らない人じゃなくて」


「私の話はそれだけです。話してもらえますか?」


「…………」


「愛花さんの心は悲鳴を上げてます。助けてって、私にSOSを出すくらいに」


「……はい。お話します」


石川の母親は、顔を上げて前の暗闇を見た。


「主人は、小さな工場をやってるんです。家の隣に工場があるんです。先生も、もしかしたら見たかも知れません」