心~保健室の先生と私~【野いちご文庫版】

疲れた。母親はかなり困惑してたけど、とりあえず来てくれることになった。


俺は石川の様子を見るために、病室に戻る。


「眠ってるよな」


あのとき、石川を抱きしめそうになった。


俺の胸で泣いている石川を。


でも、それはできない。


俺たちは、教師と生徒だ。


石川のことは、確かに常に気にかけている。


けれど、それは、俺の生徒だから。好きとか、そんなんじゃない……。


それに俺はまだ……。


「そろそろ来るかな」


俺は夜間外来の入口に向かった。


そこには、石川の母親がきょろきょろと辺りを見回していて、「先生!」と、俺を見つけ
て走ってきた。


俺の格好にびっくりした表情をしながらも、勢い込んで話し出す。


「どうしてあの子、先生と一緒にいたんですか?愛花の部屋に様子を見に行ったら、なぜか愛花のベッドに妹が寝てて。愛花の姿がどこにもなかったんです」


「お母さん、落ち着いてください。あそこで、話しましょう」