心~保健室の先生と私~【野いちご文庫版】

「いちばん近くの病院まで」


「はい。わかりました」


タクシーが動き出した。


詳しくはまだわからないけど、石川は家のことで悩んでいるみたいだ。


さっきの電話で、それがわかった。


病院に着いて夜間の外来で診てもらったら、熱が39度以上あった。


そのまま点滴をすることになり、その間に俺は石川のケータイを取り出して、家の番号を見た。


そして、公衆電話から石川の家に電話をかけた。


「もしもし、石川さんのお宅ですか?」


電話はすぐにつながった。


「私、愛花さんの通ってる高校で養護教諭をしている佐野と申しますが……はいそうです、夕方の。……詳しくはあとで説明しますので、とりあえず南病院まで来ていただけ
ますか?」


出たのは、石川の母親だった。


「夜間の外来です。保険証お願いします」


とりあえず、それだけ言って電話を切る。


「はー」