心~保健室の先生と私~【野いちご文庫版】

「出るんだ」


俺は躊躇なしに石川のカバンを開け、ケータイを取り出した。


水色で、ケータイクリーナーがひとつだけついてるシンプルなものだった。


固く握りしめられた手をほどいてケータイを握らせると、石川はあきらめたようにケータイを開いた。


通話ボタンを押す。


「もしもし?」


電話に向かって、しゃべり出した。


「……どこでもいいでしょ!」


その場にいたヤツが手を止めるくらいの声のデカさだった。


「もう、ヤダ……」


最後にそう言って、石川は電話を切った。


ケータイを持っていた手が、ゆっくり下がる。


「うっ……ひっく……」


「なぁ」


「陸」