マネージャーがため息をついたとき。


「ダメ……」という声と一緒に、また石川の目から涙が流れた。


「何かあるみたいだな」


「はい」


「店が終わるまで寝かせてあげなさい。ふたりとも、指名が入ってる」


「おし。行くか」


そう言って、陸が立ち上がり、「お前も早く来いよ」と言い残すと、先に行ってしまった。


「助けて、か」


初めて石川が出したSOS 。


それは、俺のことを信用してくれた証だったのかも知れない。


「何でも聞いてやるよ。お前の心が軽くなるまで」


石川の髪をすくった。


まっすぐなストレートの髪は、俺の指に絡まることなく抜けていった。


「今度は起きてないよな?」


俺はつい数時間前にタヌキ寝入りされたことを思い出して、苦笑いした。