心~保健室の先生と私~【野いちご文庫版】

そう言って、また石川は作り笑いを浮かべた。


「わかったから、帰りなさい。自分の体わかってるの?」


顔は赤いし、目はうるんでいる。まだ熱があるんだろうなって思った。


「帰るよ」


石川は俺に背を向けた。


と、同時にその場にしゃがみ込んだ。


「石川!?」


俺は驚いて、石川のそばに駆け寄った。


顔をのぞくと、閉じられた目から涙が流れていた。


「先生」


つぶやくような声。


「助けて」


それは、聞きもらしてしまうくらいの小さな声だった。


でも、はっきり聞こえた。


助けてって。