【愛花サイド】


下ではやっぱり両親がケンカをしていて。


「いい加減にしろ!」


「あなたこそ、どうにかしてよ!」


大きな声に、ビクっと体がふるえた。


いい加減にするのもどうにかするのも、ふたりの方だよ。


正直、ケンカの真っ最中のリビングなんて入りたくなかったけど。


体温計がほしかったから、リビングに入るため、ドアノブに手をかけた。


それを少しだけ開けたとき、私は信じられない言葉を聞いた。


「もう、無理」


それは、お母さんの声だった。


「離婚して!」


リコン? リコン、離婚……。


「いつまでたっても、工場続けて。これじゃあ、借金が増えるだけでしょ」


私はその場を動けなかった。