佐野先生があわてて、私の口をふさいだ。


「やめてください」


私は先生の手を思いっきり、どけた。


「誰かに聞かれたら、どうしてくれるんだ」


「そんなことしてる先生が悪いんでしょ? なんでそんなこと」


「別に理由なんてない。金がほしいだけだ」


そう言って、かけているメガネを押し上げた。


角ばった黒ぶちのメガネに白衣、サラサラの黒髪。


そして、顔もイケメンとくれば、女子に人気があるのは当然で。


保健室には、いつも女子の姿があった。


「とにかく、言わないでくれ」


佐野先生が私に頭を下げた。


私に対して、あまりに腰が低いから。


私はちょっと意地悪したくなった。


「どうしようかな?」