心~保健室の先生と私~【野いちご文庫版】

【祐介サイド】


少しだけ開いたドアから、石川と誰かが話している声がする。


車のエンジンを切って、俺も外に出た。


「愛花、どなた?」


「保健室の先生」


話しかけてきた女性に、ぶっきらぼうに答える石川。


「佐野です。お嬢さんに熱があったので、送らせていただきました」


「そうですか。愛花の母親です。お世話になりました」


「いえ。これも仕事ですから」


別に特別なことをしたわけではない。


具合が悪い生徒を家に送り届けるのも、養護教諭の仕事のうちのひとつだと思うし。


ただ、こういう場合は、本来なら家の人に迎えに来てもらうのがいちばんいい。


「愛花、先生にお礼は言ったの?」


石川は、母親の言葉を無視して家に入って行った。


「すみません。お礼も言えない子で」