心~保健室の先生と私~【野いちご文庫版】

「どーしようかな? 保健室のベッド、意外に寝やすかったし」


車のドアを開けながら、答えた。


「俺の仕事増やすなよ」


「わー、職務怠慢」


車から出て、先生の方を見た。


「大丈夫だよ。先生に押しつけたりしないからさ」


「押しつけるって何を?」


先生と目が合った。


「なんでもない。忘れて?」


車のドアを閉めるとき、「愛花?」と、玄関の方から私を呼ぶ声がした。


「お母さん」


仕事から帰っていたんだ。


今朝も家を飛び出して来ちゃったし、昨日あんなことがあったから、正直会いたくなかった。


それでも、同じ家に住んでいる限りお母さんとは顔を合わせなくてはいけない。


でも、話したくない。


話したらきっと、ケンカ口調になってしまう。


そんなところ、先生に見せられない。