心葉が傘立てから私の傘を取り出してるところが見えたけど、それをもらう前に私は玄関を閉めた。


雨に濡れた体が、もっと濡れていく。白い七分のTシャツが透けて、中のキャミが見えるくらいに。


ありえない。


たたかれた頬が、ジンジンする。


お母さんのピリピリした空気に触れて、私もピリピリしてしまった。


「もう、ヤダ」


泣きながら歩いた。


家の周りには、もう誰もいなかった。


たどり着いた先は、高校。


家から歩いて20分。


さっき心葉と行った通りの反対側に、大きな道路をはさんで高校がある。


「なんでこんなところまで……」


わけわかんない。


でもいいや。


誰もいないし、泣くのにはぴったりだ。


だから、泣けるだけ泣こう、そう思った。