まだ顔に残る涙をふいてくれた先生は、台所に行った。
 

しばらくすると、ミルクの甘い匂いがかすかに漂ってきた。


「愛花」


カップを床に置いて、私が起きるのを先生は手伝ってくれた。


「熱いから」


「ん」


少しずつホットミルクを口にする。


「おいしい」


「よかった」


「お父さん、ちゃんと天国いけたよね?」


「いけたよ、絶対」


空になったカップを先生に返す。


「眠って。夕ご飯できたら、起こすから」


「ん」


「何食べたい?」


「あんま、食べたくない」


「食べないと、また倒れるから。何がいい?」


「……思いつかない」