心~保健室の先生と私~【野いちご文庫版】

「どうして私をひとりにしたの?」


「愛花、俺がいる。それじゃ、ダメか?」


「先生がいてくれても、お父さんはいないの!」


叫びにも似た声をあげ、愛花はますます激しく泣き出した。


「愛花、落ち着いて。ここは寒いから、中入ろう」


「いや。触らないで」


そう言って、俺の腕をたたいてきた。


たたいたっていっても、まったく痛くない。


弱々しい手が飛んでくるだけ。


そのうち、愛花の呼吸がおかしくなってきた。


「はぁはぁはぁ……」


過呼吸だ。


俺は急いで部屋に戻って、近くの紙袋を手にとる。


「愛花、大丈夫だから」


そう声をかけ、紙袋を愛花の口に持っていった。