心~保健室の先生と私~【野いちご文庫版】

私は心葉を抱きしめた。今は、それしかできない。


「外行こうか?」


心葉から体を離して、笑顔で言った。


「うん」


財布とケータイを入れたカバンを持って、玄関のドアをそっと閉めた。


……ふたりは気付いているんだろうか?


私たちがこうやって、夜、外に出て行っていること。


外に出ると、雨の匂いがした。


「降るのかな?」


「何が?」


心葉が私に聞いた。


「うんん。何でもない」


1時間くらいで帰ってくるし、傘は、いらないよね? 


そう思って、傘を取りにもういちど玄関を開けることはしなかった。


心葉と手をつなぐ。