お前がそんな目をするから、思い出しただろ。


……いや、俺がまだあの仕事してる時点で、忘れられていないってことだよな。


「問題が解決しない限り、心は軽くならない、か」


そんなこと言われたの、初めてだよ。


養護教諭の仕事は、生徒の健康管理と、もうひとつ。


生徒の話を聞いて、心を軽くしてあげることだ。


「まったく、言ってくれるよな」


俺は石川が座ってた椅子に、目を移した。


「この仕事、否定された気分なんだけど」


保健室からグラウンドへと続く、外に出られる窓を開けてスリッパのまま外に出た。タバコを取り出して周りを確認し、火をつける。


「確か石川のクラスって、保健室の右斜め上だったよな?」


そちらの方に、頭を上げた。


「見てないよな?」


校内禁煙か。


「真面目だか何だか、わかんないな」


石川の悲しそうな目を見たこの日、俺の中で、石川はほっとけない、いや、ほっといてはいけない生徒になった。