心~保健室の先生と私~【野いちご文庫版】

「愛花」


俺は怒った声を出した。


「わかった。寝る」


ごそごそと音がして、愛花はおとなしくベッドの中に入ったようだった。


「早く治さないと、期末受けられないぞ」


「先生、数学教えて」


「数学の先生に、教えてもらえばいいだろ?」


「こほっ……数学の先生じゃ、わかんない」


「数学の先生だから、わかるんだろ?」


「ちがっこほっ。数学の先生は、自分の知識を押しつけてくるだけ。教科書では教えてないんだけどなって」


「そうなの?」


「こほっこほっ。だから、余計わかんなくなるの」


そう言って、また咳をする愛花。


「わかった。教えてやるから、寝ろ。咳、ひどくなってる」


「ん」


「おやすみ、愛花」


「おやすみ」