【愛花サイド】


「愛花、車に乗りなさい」


「うん」


10時少し前、私はお父さんに連れられて病院に向かった。


頭がボーっとする。また熱が上がってきたのかも知れない。


車でどこかへ出かけるのは久しぶりだった。


前はお父さんとお母さんと心葉と、よく出かけていたのに。


運転席にお父さん。助手席に、お母さん。


そして、うしろの席に、子供たち。これが定位置だった。


お父さんは、無言で運転している。


先生が帰ってから病院に行くまで、お父さんは1回も私の部屋に来なかった。


先生に来てもらうの、ガマンすればよかった。


もっと早く帰ってもらえばよかった。


そうしたら、先生にイヤな思いをさせることも、お父さんを怒らせることもなかった。


今さら後悔が襲ってきた。