心~保健室の先生と私~【野いちご文庫版】

「うん」


「昨日の午後から愛花さんの具合がよくなかったので、心配でここにいました」


お父さんは私の部屋を見回し、薬の箱や体温計に目を移した。


「それじゃあ、特に何もなかったと?」


最後にもういちど、お父さんの視線が先生に移った。


「はい。何もありません」


「愛花」


急に名前を呼ばれて、私は顔を上げた。


「もう、具合はいいのか?」


「まだ、熱ある」


「解熱剤で一時的に下げただけなので、また上がるかも知れません」


先生がそう付け足した。


「10時になったら病院に行くから、それまで寝てなさい」


「お父さん……」


「それから、先生には早く帰ってもらいなさい。今日も学校があるはずだ」


そう言って、お父さんは部屋を出て行った。