差し出された体温計を受け取った。


「7度8分。もっと早く、ここ来い」


「だって……」


「もういい。放課後まで、寝てろ」


「先生、怒ってる?」


「怒ってないから、寝ろ」


「ん」


すぐに愛花の寝息が聞こえてきた。


その姿を見て、ため息が出る。


父親に迷惑かけたくないのは、わかる。


でも、俺には頼っていいんじゃないか? 


もっと甘えていいんじゃないか?


しんどいなら、しんどいって言えばいいだろう。


迷惑とか心配かけるとか、愛花はそんな言葉を並べて自分のことを隠そうとする。


それが愛花らしいって言えばそれまでだけど、もっと素直になれよ。