私はケータイを手にした。


発信履歴も着信履歴も、ほとんど同じ番号で埋まっている。


「もしもし? 愛花?」


先生の優しい声が聞こえる。


「先生……」


「どうした? 泣いてるのか?」


「うん。泣いてる」


「何かあったのか?」


「お父さん、工場辞めるの」


「そっか」


「私、何にもしてあげれなかった」


「しょうがないよ」


「お父さん、ひとりで頑張って来たのに」


「愛花……」


「ひとりで悩んで、全部、全部ひとりで背負ってたの」