「でも……」


でもでも。今まで頑張ってきたじゃん。


ほんとにもう、無理なの? 


「工場があった土地を売って、従業員の退職金と借金の返済にあてようと思う」


「いいの? ほんとに」


「ごめんな、愛花。もっと早く決断してれば、お母さんとも離婚しなくて済んだのにな」


「仕事……は?」


「もう決めてきた。夜勤とかあって、愛花をひとりにすることもあると思う」


「何の仕事?」


「また工場だよ。ただ、機械が全部やってくれる大きいとこ」


「それで、いいの?」


「もう、いいんだ。十分だよ」


「そう。お父さんが決めたことなら、私は何も言わない」


「ありがと、愛花」


そう言ったお父さんの目には、少しだけ涙が光っていた。