心~保健室の先生と私~【野いちご文庫版】

【佐野先生サイド】


あのときだ。


陸が仕事中に外へ出て、なかなか戻ってこなかったときがあった。


俺が呼びに行ったら、ちょうどケータイで電話を切ったところで、俺に言ったんだ。「頑張れよ」って。


愛花に電話をしていたのか。


番号は、俺のケータイから勝手に見たんだろう。


「愛花……おいで」


「うん」


ふたりで、ベッドに座った。


しばらく沈黙が続く。


「ごめんね、先生」


「えっ?」


「先生の写真、勝手に見て」


愛花はうつむきながら、俺に言った。


「愛花、俺の話聞いてくれる?」


こくりと、愛花はうなずいた。