病気になる前の明里は、とにかく明るくて誰かに弱みを見せたことがなかった。


だから、明里が病気になっても、俺は明里は強いから大丈夫だって勝手に思っていた。


でも、ほんとは。触れたら壊れちゃいそうなほど、明里の心は弱っていた。


でも俺は気付かなかった。最後の最後まで、明里は強がっていたから。


俺がそれに気付いたのは、もらった手紙を読んだときだった。


明里とは、俺が働いている店で出会った。


まだ、俺も明里も20歳だった。


俺はそこでバイトを始めて間もなかったし、明里は初めてホストクラブに連れて来てもらっていて、お互いかなり緊張していた。


でも年が同じってことと、大学で勉強していることが同じだったっていうこともあって、すぐに仲よくなったんだ。


友達から恋人になるまでに、そんなに時間はかからなかった。


そして1年。交際は順調だった。


でもある日、明里が倒れたって知らせを受けた。


俺は急いで病院に行った。そのとき当の本人は、意外にも笑っていた。


「大丈夫だから、心配しないで。一応検査するけど」


そう言って、笑った。