いつの間にか、目の前の景色が涙でにじんでいた。


「写真、汚しちゃうよ」


さっきと同じ場所に、写真をはさんだ。


予鈴が鳴った。


私は、ごしごしと涙をふいた。


「行かなきゃ」


教室、戻らないと。


保健室を出るとき、佐野先生がちょうど私の向かう方向から姿を現した。


泣いている顔を見られたくなくて、うつむいて横を通り過ぎようとした。


「石川」


でも、先生は私を呼び止めた。


「何?」


私は、顔を上げた。目が少し、赤くなっていたかも知れない。


「泣いてた……のか?」


「違うよ。目にゴミが入っただけ。授業始まるから行くね」


そう言って、逃げるように先生の前を去った。