「水族館の魚って、イライラしたりするのかな?」


「イライラ?」


「うん。私たちは、広い水槽で泳いでて気持ちいいだろうなとか思うわけでしょ?」


「そうだな」


「でも魚たちからしたら、川や海の方が広いじゃん。だから、イライラするのかなって思って。海の方が、気持ちいいぞって」


「どうだろうな? 例えばだけど、ずっと水族館で育った魚はイライラしないんじゃないの?」


「人工飼育?」


「そう」


「じゃあ、人工で育った魚が海とかに出ると、逆にイライラするのかな? 広過ぎて」


「なんでそんなこと、気にしてんの?」


ちょうど信号が赤になって、先生が私の方を向いた。


「別に特に理由はないんだけどね。なんとなくそうかなって思って」


「そっか」


「水族館ね、たまにお父さんとお母さんと心葉で行ったの。心葉、すごいはしゃいでね……」


しばらくすると、家からいちばん近くの水族館に着いた。