車に乗ると、先生が聞いてきた。


「遅くなるんじゃないぞ、って」


「そっか」


「ちょっと不機嫌だった」


「そりゃそうだよな。同い年ならまだしも、年上だしな」


佐野先生は、困ったように笑って車を発進させる。


「で、どこ行くか決めてきた?」


「水族館」


「了解」


先生は、車を右折させた。


「なんで水族館?」


「うーん。特に理由はないの。ただ、ひろーい水槽で泳いでる魚を見たくなっただけ」


「何だそれ」


「ねえ、先生」


「ん?」