「お茶碗割ってケガするなよ」


「しないよ」


「まだ嫁入り前なんだから」


「お父さん、私に結婚してほしい?」


少しからかってみようかなって軽い気持ちで、お父さんにそう言ってみる。


「えっ……そりゃ、まあ」


ちょっと、しどろもどろになってるし。


「大丈夫だよ。まだ当分ないから」


「そっか。そうだよな」


そんな、明らかにホッとしているお父さんを見ていたら、笑いが込み上げてきた。


「何笑ってんだ、愛花」


「なんでもない」


私は台所に立ち、思いっきり蛇口をひねって、水を出した。


夏の暑さに、水道の水はとても気持ちよかった。


「愛花、行ってくるから」