「まあ、頑張ってよ。いつまでも、お父さんが工場で働いてる姿見たいからさ」


「ああ」


小さいころから好きだった。


お父さんの働いている姿を見ること。


工場の隅から、のぞくの。


そしたら、お父さんが汗を流して働いている。


そして、私に気付くと、「危ないから近づくなよ」って言って、また仕事を始める。


お父さんの働いている姿が見られる。


それが、ひそかに私の自慢だった。


だって、普通サラリーマンとかだとそんな姿を見ることはできないでしょ? 


学校の友達は、「お父さんがどんな仕事してるかわかんない」って言っていた。


でも、私ははっきり答えることができたから、すっごく嬉しかったのを覚えている。


「さて、片付けるかな」


そう言って、お父さんは立ち上がった。


「いいよ。私がやっとく」