「何教えてくれる?」


「愛花が知りたいことなら何でも」


「じゃあ、全部」


「お前らがよく使ってる、自己紹介カードでも書くか?」


「それがいいかもね」


私の決心は、ほんの数分で崩されてしまった。先生のせいで。


「帰るぞ」


先生は私の手をとった。


「教えてくれるんじゃないの?」


先生の背中に向かって、すねたような声をかけてみる。


「保健室でな」


そう言って、私の手をギュッと握った。


温かい先生の手。


守ってやる、そう言われているみたいだった。


大切な人はいらない。


でも、先生だったら信じていいかも知れない、そう思った。


心が、先生を求めていた。