心~保健室の先生と私~【野いちご文庫版】

波の立たない、静かな心がほしかったのに。


「先生はずるい」


「どうして?」


「私の心に入り込んでくる」


「入っちゃった?」


「うん」


「そっか」


「きっと、ホストなんかやってるからだよ」


「お前なぁ~。雰囲気壊すようなこと言うな」


先生は私を離した。


私はそのまま、木の柵のところまで歩いた。


「ごめんね、先生。でもこれが私なの」


手で柵を持って身を乗り出すと、夜景がもっとよく見えた。


風が、私の髪をゆらしていく。


「知ってるよ」