【愛花サイド】


もうすぐ夜中の12時になろうとしていた。


離婚が決まってからは、親がケンカをすることはなくなった。


その代わり、冷めた空気が家の中を包んでいた。


その冷めた空気は、ケンカをしていたころより、余計に私の心を重くさせた。


家に家族はいるのに、もうそれは家族とは言えない集団になっている。


ただ、人が集まっているだけ、という感じ。


私はひとり、リビングで先生が来るのを待つ。


さっきまでは、心葉と一緒にベッドに入っていたけれど、心葉が眠ったのを確認して抜け出してきた。


握っていたケータイが、ピカピカ光る。


「もしもし?」


「外にいるよ」


先生からだった。


「うん、行く」


リビングの窓を開けると、佐野先生が車を降りて外で待っているのが見えた。