【祐介サイド】


初めて石川が、自分から俺に電話をかけてきた。


その声は弱々しく、何かあったんだ、そう感じずにはいられなかった。


『迎えに来てほしい』


だったら、迎えに行くよ。お前の気持ちがそれで晴れるなら。


「あれ? 裕真、今日車?」


「そうだけど」


陸が珍しそうに俺に言った。


「酒飲めないじゃん」


「今日は飲まない」


「はぁ? 飲まない?」


陸が怪訝そうな顔をして俺を見てくる。


「そっ。飲まない」


どこに行きたいと言うだろうか。どこに連れて行ったら、


石川の心は晴れるんだろう。


せっかく俺を頼ってきたんだから、少しでも石川の心を軽くしてやりたい。


そんなことを思いながら、仕事をこなした。