奈月の言葉に眉を潜めて首を傾げる賢磨に、同じように首を傾げる奈月。


「生八橋って…何だ?生で食ったら腹壊すぞ」


「いえ、お腹は壊しませんよ
ラムネやチョコレート味もあるんですよね?
とにかくとっても美味しいやつですよ!」


「…ら、らむ?ちょ?なんだ それ…」


力説する奈月を余所に賢磨は意味の不明な言葉の羅列に御手上げ状態だ。


「よく分かんねえが…
その、らむだかちょはおめえさんの国にあるもんか?」


「ありますけど… ラムネとチョコもご存知ないんですか?」


怪訝そうに言う奈月に賢磨は、


「んなもん訊いたことも見たこともねえよ
それと生八橋なんてもんもな」


―――――生八橋なんて何かを訊き間違えたんだろ



否定の言葉を浴びせ、奈月の勘違いだと自己完結をする。


「………(そんな事ないと思うんだけどなあ)」


これ以上は何を言っても無駄だと解っている奈月は、腑に落ちないが口に出さずに頭の中で押し留め、八橋を食べ進めた。

そうして、ふと先程から気になっていた疑問を思い出し奈月はお茶を啜りながら、お茶請けに手を伸ばしていた賢磨に投げ掛ける。


「あの、稔麿さんはどちらに行かれたんですか?」